聞かなかった場所

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  • 厚生福祉省に勤める浅井恒子は、女性・子育て支援局の…厚生福祉省に勤める浅井恒子は、女性・子育て支援局の次長として活躍するやり手のキャリア・ウーマン。部下である総務課長の沼袋に対するあたりは厳しいが、「少子化」をテーマにした恒子の講演会は、笑えて為になると常に評判だ。夫の英夫は一応小説家だったが、若い頃に大きな文学賞を受賞して以来全く小説が書けず、家計は全て恒子が支えていた。そんなある日、恒子は突然出張先で英夫が亡くなったことを知らされる。長年心臓に持病を抱えていたが、心筋梗塞を起こしてしまったのだという。しかも恒子は葬儀後、義妹の博美から意外なことを聞かされる。なんと英夫は大塚で倒れ亡くなったというのだ。馴染みのない大塚になぜ英夫はいたのか…?全く心当たりがない恒子は引っ掛かるものを感じる。しかし、英夫が倒れた際近くの薬局の店主が救急車を呼ぶなどして介抱してくれたこともあり、博美に促され恒子は薬局へお礼に向かうことになる。数日後、恒子と博美は大塚にやって来た。坂の途中にある古ぼけた小さな薬局・高橋薬局で英夫は息を引き取ったのだという。恒子は、店主の高橋に感謝の言葉を口にするが、どこか様子のおかしい高橋の態度に戸惑いを覚える。しかも、英夫が坂のどちらから歩いて来たのかを尋ねたところ、坂の上からだと聞かされ、恒子はますます困惑する。坂の上にはラブホテルが軒を連ねていたのだ…。英夫は浮気をしていたのか?そもそも英夫が何の為に大塚へ行ったのか?疑問を抱いた恒子は手掛かりを探し始める。坂の上のラブホテルをしらみつぶしに当たるなど大塚に通いつめる恒子だったが、英夫のことを見かけたという目撃証言は一向に得られず、やがて恒子は次第に手がかり探しを諦め、もとの多忙な生活に戻っていく。そして、3ヵ月後。ますます仕事に打ち込むようになり、出世街道をひた走る恒子は、ある晩ふと思いつき再び大塚へと足を向ける。ところが大塚に行ってみると、坂の途中にあったはずの高橋薬局は、駅前の一角へと移転し新装開店していた。駅前の店へと足を運ぶと、古ぼけた薬局店の冴えない店主だったはずの高橋が、若い従業員を雇いはつらつと働いていた。何故坂道の小さな店から、立地の良い駅前へと移転することが出来たのか…?気になった恒子は、登記簿を調べることにする。すると思わぬ事実が判明し…。

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